R ちゃん。明日は Masaki’s Kitchen だけどさ。
オレ、明日の朝、マルシェに食材の仕入れに行くんよ。
同行して取材したら、面白いんと違うかなと思って。
サン・ドニ門は分かるよね。6時半集合とか、どうかな?
(ろくじはん?)
こっそりと私のカラダの具合を伝えていた、海外セールス担当氏、GEA のバイヤー女史は、押し黙ったまま。Masaki さんはと言えば、いつもなら笑顔で即答するはずの R ちゃんが、何故か言葉に詰まっているのを、不思議そうに眺める。暫しの沈黙。賑やかなサンタンヌ通りから、1本入ったところにあるレストランでは、華やかなオペラ地区にあって街の喧騒とは無縁で、この沈黙をごまかしてくれるような騒がしさは、無い。
Masaki さんの怒涛のアメリカ出張の模様を facebook 経由で眺めながら。ビシバシと伝わってくるそのハードさ加減に、同行していなくてよかっ … いやいや、さぞかし有意義な出張だったようとお見受けし、嗚呼ご一緒したかった残念無念などと呟きつつ。このアメリカ出張の後日談は、またおいおい、Masaki さんに取材をさせて頂くとしまして。
まさにノンストップ、歩みを止めない Masaki さん。引き続き6月以降はヨーロッパ方面を攻めに攻めるとお聞きしておりますゆえ。それへの準備運動ではないですが、私も幾らかご一緒する機会を得ました、去る3月のパリでの時間から。最近はヨーロッパ出張での恒例になりつつあります、名物 Masaki’s Kitchen の最新回に触れさせて頂こうかしらと。これまでパリ(昨年10月)、フィレンツェ(今年2月)と、華やかなその模様をレポートしてまいりましたが。このパリ最新回では少し趣向を変えて、その「舞台裏」に迫った取材の模様を皆さまに …。
さてさて。
(M.&Kyoko の新作 / 超絶技巧の刺繍シャツ)
去る3月のパリ・ファッション・ウィーク。ブランドさまへの糸のご提案に M.&Kyoko の新コレクション発表、そして GEA のバイイングと、精力的に予定をこなす Masaki さん。改めて、ひとつの会社がファッション・ウィーク中にこうも多様な動き方をするというのは、世界広しと言えど、佐藤繊維くらいではないでしょうか。
そんな、ファッション・ウィークも後半に差し掛かったある日の夕刻。Masaki さんから、そろそろアジア料理が恋しいねえという声が上がり。オペラ地区にある評判のコリアン・レストランにて、夕食を共にさせて頂く機会がございました。ときはまさに、Masaki’s Kitchen を翌日に控えるというタイミング。ビッグ・イヴェントを目前に、Masaki さんの表情にも、期するものがうかがえます。かたや、わたくし。恥ずかしながら、パリの前の訪問先であったミラノで大風邪をひいてしまい、なんとか最悪期は脱してきた、という具合。
さて、件のコリアン・レストランにて。知っている人は知っている、数分おきにテーブルを囲む全員にお酌をするよう自動プログラミングされている Masaki さん。ここパリでもそのリズムは寸分の狂いなく、韓国シェア No1の誉れ高いハイトビールを、私のグラスにも、しきりと注いで下さるのでした。
(明日のアポイントはお昼から。朝は少しゆっくりできる。
今晩を乗り切れば、なんとか体調も回復させられるだろう。
チャミスルじゃなくてラッキーぢゃないか。飲めジブン!)
と、この観察日記の文体からは想像し難いかとは思いますが、実は元・商社マンでもあるわたくし。面目躍如とばかり、果敢にグラスを傾けるのでありました。
治りかけの風邪の残り熱とアルコールがカラダに充満し、意識がふわふわとしながらも。締めの石焼きビビンバを皆で取り分けつつ、ほぼ平らげ。あとはこのオコゲ、これが美味しいんだよね〜、さあ誰がさらえちゃおうか、といった雰囲気に差しかかった頃。いわゆるひとつの、宴もタケナワというやつでございますね。こうして、誰もが幸せなエンディングを予感した、そのとき。穏やかな表情の Masaki さんが、優しい視線をわたくしに向け。しかして、その口調は極めてはっきりと、こう切り出したのでした。
R ちゃん。明日は Masaki’s Kitchen だけどさ。
オレ、明日の朝、マルシェに食材の仕入れに行くんよ。
同行して取材したら、面白いんと違うかなと思って。
サン・ドニ門は分かるよね。6時半集合とか、どうかな?
(ろくじはん?)
こっそりと私のカラダの具合を伝えていた、海外セールス担当氏、GEA のバイヤー女史は、押し黙ったまま。Masaki さんはと言えば、いつもなら笑顔で即答するはずの R ちゃんが、何故か言葉に詰まっているのを、不思議そうに眺める。暫しの沈黙。賑やかなサンタンヌ通りから、1本入ったところにあるレストランでは、華やかなオペラ地区にあって街の喧騒とは無縁で、この沈黙をごまかしてくれるような騒がしさは、無い。
小さく息を吸い込むわたくし。
「えっ! いいんですか!?」
ビビンバの石鍋を挟んで対面する Masaki さん。
ニカッ。
という擬音が実際に聞こえてきそうな、
スマイル全開で、親指を立てるのでした。
と。
ここまで、企業の公式 HP 史上稀に見る(?)、
「お仕事臭」のしない内容で恐縮でございます。
しかし、こうしたイベント事にこそ。
Masaki さんのスピリットを示すエッセンスが、
むしろ見いだせるのではないかと思ったり。
そして。
恐縮と言ったそばから、更に恐縮なことに。
既にけっこうな長文になってしまいましたので、
ここで、いったん区切らせて頂くこととし。
事の詳細は次回に続けてお伝えしようと思い至り。
(前方に七月革命の記念柱を臨むマルシェ)
「舞台裏の舞台」はバスティーユ広場の朝市。
第2部は写真も豊富に、お届けしてまいります。
いざ、続く。
そうそう / 特命書記 R