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2017.05.22

工場見学のすゝめ(その3)

初級編中級編とお届けしてきました「工場見学のすゝめ」シリーズ。いよいよ今回、上級編として。更なるその愉しみを、皆さまにご提案できればと思う次第でございます。

 

さて。これまで、片手では収まり切らないくらい、Masaki さん率いる工場見学に参加しています、わたくし。そんなわたくしですが、初めて参加をするに際し、抱いた疑問、そして不安。自分自身はものづくりに直接的に携っているわけではなく、さしてクリエイティブな仕事をしているわけでもない。そんな自分が、ものづくりの現場を拝見することで、どれだけの学びを得られるのか。

 

ここまでの初級編、中級編を通じて。そのような不安は要りませぬ、皆さま、レッツ・ラ・エンジョイ! というメッセージを、わたくしなりに、お届けしてきたつもりではありますが。

 

今回の上級編では、更に欲張って。単にエンジョイするどころか、ことさら、この佐藤繊維の工場見学を通じて。見学者、つまり皆さま、それぞれのお仕事や普段の生活に対して、具体的なヒントが。いや、更に言えば「ブレイクスルー」と呼べるような発見すら、得られる可能性があると。そんな大胆な提言をさせて頂こうと、企んでいるのでございます。皆さま、いざ、ご覚悟を!

 

 

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佐藤繊維の工場見学で Masaki さんが、皆さまにお伝えするストーリー。そのハイライトとも言えるのが。佐藤繊維がどのようにして、世界を驚かせる糸をつくり出すような、昨今に至る発展を遂げたのか。

 

Masaki さん曰く。ひとつのきっかけは、ある逆転の発想。

 

日進月歩の繊維の世界。紡績の機械もご多分に漏れず進化を重ね。より早く、よりたくさんの糸を紡ぐべしという、世界を覆うニーズに牽引され、どんどんと洗練されていき。しかし、この進化の過程で、紡績の機械が失っていった能力もあるのだと。それは、ずばり、往年のマシンが備えていた「図太さ」とも言えるようなもの。

 

これ、単なるノスタルジックなお話にあらず。まさに当時、目覚めつつあった Masaki さんのように。世に無い特別なものをつくりたい、という身からすれば。進化を続ける紡績機は、ときに困った問題を露呈するのでした。それは、新しい機械ほど「きれいに整った原料」しか受け付けない、投入できないという悩ましさ。

 

早く、たくさんのアウトプット(糸の生産)を実現するために進化した紡績機は、その進化の過程で。品質が良く、一様に整ったインプット(例えばウールといった原料)しか受け入れない体質になってしまったのでした。スマートに進化するあまり、荒々しさを失ったという。そしてこれは、新しい糸を生み出すために、ときには、奇抜で不揃いな原料を使いたかった Masaki さんにとって、大きな課題となったのでした。

 

そこで Masaki さんがとった逆転の発想。

 

ライバル各社が、最新の紡績機をじゃんじゃんと導入し、古い機械と入れ替えていく。そうして、各所で不要となった、古いビンテージの紡績機を。ひっそりと、しかし着実に。Masaki さんは引き取り、工場にコレクションしていったのでした。粗悪な原料でもゴリゴリと紡いでいた、たくましい昔の機械を。

 

それら、ビンテージ式の紡績機は。決して、アウトプットの「量」は望めないものの、その一方で。最新の機械では、もはや扱えないような特殊な原料でも、なんとか、かんとか、紡いでくれるのではないか。中国などのアジアの生産地が台頭してくるこれから、規模ではなく、ユニークさで勝負しなければ未来はない。そう睨んでの、大胆な舵取り。

 

かくして。

 

数々の世界トップ級のメゾンに糸を提供するに至る、
佐藤繊維の進化が始まったのでありました …。

 

 

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佐藤繊維の工場を巡り、Masaki さんが伝えるこのストーリーを聞いて。まずは純粋に、感銘を受けつつ。しかし、これを単なる感動の秘話として消費するだけでなく、自分自身の肥やしにもできるのではないか。Masaki さんのストーリーを、改めて、反芻をしてみると …。

 

機械であれ、もしくは、マシンに限らずとも、なんらかのシステムであれ。効率化を求める進化の過程で、失われてしまう能力がある。例えば、紡績機であれば、近代的に進化することで、粗悪な原料を扱えなくなってしまったように。しかし、その失われた能力を振り返ってみて。そこに、今だからこその、活用の「しがい」があるのではないかと考える。そんな発想。

 

実際に Masaki さんがやったことは。昔は糸づくりの原料として注目されていなかった特殊な素材、例えば和紙なんかを取りあげて。これを、最新の紡績機では紡ぐことはできないが、逆に古い機械であれば、多少の改造を施してあげることで、なんとか紡げるのではないかと考えて。そうして、結果的に、世界のメゾンがこぞって欲しがる、ユニークな糸を生み出した。

 

このような例、言い換えれば「可能性」が。糸づくりの分野でしかあり得ないとは、とうてい思えないわけで。自分が関わる仕事や、もしくは日々の暮らしの、どこかにも。同じように発想の転換をすることで、発見できる「ブレークスルー」が潜んでいるはず。

 

つまり。敢えて、古い機械やシステムに、今風のインプットを入れてみる。すると、画期的なアウトプットが飛び出てくる … かも!? 自分の身の回りにも、そのような「ケース」があり得ないだろうか。そんなことを考えながら、工場の中を、Masaki さんに導かれながら歩けば。ひたすらに、ワクワクすることこの上なく。だからこそ …。

 

 

工場見学はやめられない!

 

 

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という、そんな昂(たかぶ)る思いを、皆さまと共有させて頂きまして。この「工場見学のすゝめ」シリーズ、今回の上級編を締めくくらせて頂ければと思います。それでは、皆さまの工場見学に、幸あれ!

 

 

そうそう / 特命書記兼もはや工場見学マスター R

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